死亡した人の契約を解除する方法|契約の種類ごとに解説

2024年07月11日
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死亡した人の契約を解除する方法|契約の種類ごとに解説

久留米市が公表している統計資料によると、令和3年(2021年)の久留米市内の死亡者数は、3387人でした。そのうちの9割以上は、60歳以上の高齢者が占めています。

大切なご家族が亡くなると、さまざまな手続きが必要になります。代表的なものとしては、遺産相続の手続きがありますが、それ以外にも水道光熱費の契約の解除、不動産賃貸借契約の解除、スマートフォンなどの通信関係の契約の解除などを行わなければなりません。

契約者本人が死亡しているため、契約関係を解除するためには通常とは異なる手続きが必要になります。本コラムでは、死亡した人の契約を解除する方法について、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスの弁護士が解説します。


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1、原則として契約は相続によって引き継がれる

まず、家族などが死亡されて相続が発生した場合に、被相続人が契約者となっていた契約はどのように扱われるかについて、基本的なポイントを解説します。

  1. (1)相続の効果

    被相続人の死亡に伴って相続が開始すると、被相続人に属する一切の権利義務は、相続人に承継されます(民法896条)。
    その際には、現金や預貯金に不動産などのプラスの財産はもちろんのこと、借金や負債などのマイナスの財産も相続人に引き継がれます。
    そして、「契約上の地位」も相続の対象に含まれるため、被相続人が契約者となっている契約も相続人に引き継がれることになるのです。

    したがって、被相続人が締結した契約の解除などの手続きは、契約上の地位を相続した相続人が行っていく必要があります。

  2. (2)相続放棄により権利義務の承継を免れることができる

    相続放棄とは、相続に関する一切の権利と義務を放棄するための手続きです。
    相続放棄をすることで、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続する必要がなくなるため、相続放棄は主に被相続人に多額の借金がある場合に利用されます。

    相続放棄をすれば、契約上の地位も引き継ぐ必要はないため、被相続人が契約者となっている契約の解除などの煩わしい手続きからも解放されます。
    なお、相続放棄をする場合には、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があることに注意が必要です。

2、水道光熱費の契約

以下では、被相続人が契約者となっている水道光熱費の契約に関する手続きについて解説します。

  1. (1)契約を引き継ぐ場合

    被相続人が契約者となっている水道光熱費の契約は、被相続人の死亡により相続人に引き継がれます。
    ただし、そのままの状態では、相続人全員が契約を引き継いだ状態になってしまいます。
    相続人のうち誰が契約を引き継ぐのかが決まっている場合には、名義変更の手続きを行いましょう。

    また、水道光熱費の支払いが被相続人名義の口座からの振り替えになっている場合は、支払い方法の変更も行う必要があります。
    なお、相続発生時に未払いの水道光熱費がある場合には、被相続人の遺産を相続した相続人が法定相続分に応じて負担することになります。

  2. (2)契約を解除する場合

    被相続人がひとり暮らしをしていた場合には、水道光熱費の契約を引き継ぐ人がいなくなるため、水道光熱費の契約を解除する必要があります。
    水道光熱費に関しては、水道や電気などを使用していなかったとしても基本使用料が発生しますので、水道光熱費の契約が不要だという場合には無駄な出費を抑えるためにも早めに契約解除の手続きを進めていきましょう。

    水道光熱費の契約の解除は、水道局や電力会社、ガス会社などの問い合わせ窓口に連絡をして、「契約者が死亡したため、契約を解除したい」旨を伝えれば、手続きを進めてもらうことができます。
    具体的な手続きや必要書類については、契約先によって異なりますので、問い合わせの際に確認してみてください。
    適切に手続きを進められたら、一ヶ月もかからずに解除することができるはずです。

3、不動産の賃貸契約

以下では、被相続人が契約者となっている不動産の賃貸借契約に関する手続きについて解説します。

  1. (1)被相続人が賃貸人だった場合

    ① 賃貸人の地位の相続
    被相続人が収益物件を所有して、第三者に賃貸している場合には、賃貸人の地位が相続の対象になります。
    賃貸人が死亡したとしても、法律上、賃貸借契約は終了することはなく、賃貸人の死亡により自動的に賃貸人の地位が相続人に承継されることになります。
    また、相続人が複数いる場合には、賃貸人の地位は相続人全員が承継して、相続人全員の共有状態となります。

    共有状態のままでは契約関係の処理に手間がかかるため、通常は、遺産分割協議により賃貸人の地位を承継する相続人を決めることになるでしょう

    ② 賃貸借契約の解除
    建物所有目的の土地賃貸借契約および建物賃貸借契約については、借地借家法という法律が適用されます。
    また、借地借家法では、建物の賃貸借については、賃貸人の側から契約の解除(解約)をするためには、6ヶ月前までに解約の申し入れをすること、および解約の申し入れに正当事由があることが必要とされています。

    正当事由の有無は、具体的には以下のような事情を考慮して判断されます。

    • 賃貸人と賃借人の建物の使用を必要とする事情
    • 賃貸借に関する従前の経過
    • 建物の利用状況
    • 建物の現況
    • 立退料の提供


    賃借人を保護するという観点から、正当事由は簡単には認められない運営となっています。
    たとえば、「旧賃貸人が死亡したから解約したい」という理由だけでは、賃貸借契約を解除することは難しいでしょう

  2. (2)被相続人が賃借人だった場合

    ① 賃借人の地位の相続
    賃貸借契約においては、賃借人が死亡しても賃貸借契約は終了せず、賃借人の地位は相続人に承継されます

    相続人が複数いる場合は、遺産分割協議成立までの間、相続人全員が賃借人の地位を共有している状態になります。
    そして、遺産分割協議により賃借人の地位を引き継ぐ相続人が決まったら、当該の相続人が単独で賃貸人の地位を相続することになります。

    ② 賃貸借契約の解除
    賃借人による解除(解約)ができるかどうかは、賃貸借契約が期間の定めのある契約であるかどうかによって異なってきます。

    ・ 期間の定めのない賃貸借契約
    期間の定めのない賃貸借契約であった場合、賃借人は、いつでも賃貸借契約の解約ができます。
    この場合には、解約の申し入れから、土地については1年、建物については3ヶ月を経過することにより賃貸借契約は終了します。
    なお、すぐに賃貸借契約を解約したいという場合には、賃貸人と話し合いをして賃貸借契約の合意解約を目指すことになるでしょう。

    ・ 期間の定めのある賃貸借契約
    期間の定めのある賃貸借契約であった場合、原則として、契約期間中に賃貸借契約を解約することはできません。
    ただし、契約時に解約権留保特約を付した場合には例外的に解約が認められて、解約申し入れから、土地については1年、建物については3ヶ月を経過することにより賃貸借契約は終了します。
    解約権留保特約がない場合や即時解約を希望する場合には、賃貸人と話し合いをして賃貸借契約の合意解約を目指すことになります。

4、スマートフォンやインターネットなど通信関係の契約

以下では、被相続人が契約者となっているスマートフォンやインターネットなどの通信関係の契約に関する手続きについて解説します。

  1. (1)解除の手続きが必要になる通信関係の契約

    被相続人が契約者になっている通信関係の契約も相続により相続人に承継されます。
    そのため、相続人は、通信関係の契約を解除する手続きを進めていかなければなりません。

    通信関係の契約といってもさまざまなものがありますが、代表的なものとしては、以下のような契約が挙げられます。

    • スマートフォンなどの回線契約
    • プロバイダとの契約
    • インターネットの回線事業者との契約
  2. (2)通信契約の解除

    通信契約を解除するための具体的な手続きの内容は、通信契約を締結している事業者によって異なってきます。
    基本的な手続きの流れは、下記の通りです。

    ① 通信事業者の問い合わせ窓口に連絡
    まずは、通信事業者の問い合わせ窓口に連絡をして、「契約者が死亡したため、契約を解約したい」旨を伝えましょう。

    ② 書類の提出
    契約を解約する際には、書類の提出は必要ない場合も多いです。
    ただし、事業者によっては、契約者の死亡を確認するために、以下の書類の提出を求められることがあります。

    • 死亡診断書の写し
    • 戸籍謄本


    ③ 機器の返却
    通信事業者からモデムやルーターなどの機器をレンタルしている場合には、それらの返却が必要になります。
    返却が必要な機器がある場合には問い合わせの際に通信事業者から指摘がありますので、通信事業者の指示にしたがいながら返却の手続きを進めていきましょう。

    ④ 違約金や未精算料金の精算
    死亡による解約であるとしても、契約期間の途中で契約を解約した場合には、違約金が発生することが大半です。
    また、解約のタイミングによっては未精算の利用料金が発生していることもあります。

    これらの違約金や未精算の利用料金は、相続債務として相続人に引き継がれるため、相続人が支払いを行わなければなりません。

5、損害保険(自動車保険)契約

以下では、被相続人が契約者となっている損害保険契約に関する手続きについて解説します。

  1. (1)損害保険契約の相続

    被相続人が契約者になっている損害保険契約がある場合、被相続人の死亡により、損害保険契約における契約上の地位は相続人に承継されます。

    被相続人の死亡によって契約が終了するわけではないため、契約上の地位を相続した相続人による解約の手続きが必要となります

  2. (2)損害保険契約の解約手続き

    損害保険契約を解約する際の手続きは、損害保険会社によって若干異なりますが、基本的には以下のような流れで行います。

    ① 保険契約の名義変更
    損害保険契約を解約する場合であっても、そのままの名義では契約の解約を受け付けてもらえないことが多いでしょう。
    そのため、まずは契約を引き継いだ相続人名義に変更する手続きが必要になります。

    ② 解約の手続き
    相続人名義への名義変更が終了した段階で、損害保険契約の解約を行います。
    解約時に返戻金などが発生した場合には、解約時の名義人である相続人に対して支払われます。
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6、まとめ

被相続人が亡くなった場合、被相続人が契約者になっていた契約の解除や解約に手続きが必要になります。
そのため、まずは被相続人がどのような契約をしていたのかを確認する必要があります。
解除手続きが遅れると、無駄な費用が発生してしまうため、早めに手続きを進めていくことが大切です。

遺産相続の手続きにあたっては、専門家である弁護士のサポートを受けることも検討しましょう
遺産相続でお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所 久留米オフィスまで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています