子どもがケンカでケガをした! 損害賠償を請求する方法を弁護士が解説
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久留米市が平成29年9月に行った、「久留米市子どもの生活実態調査」の報告書によると、「毎日の生活で楽しいと思う場面」について聞いた質問には、小中学生ともに「友達と過ごしているとき」の割合が高いということがわかりました。ほっとするような気持ちになる結果です。
しかし、子ども同士の遊びには、ケンカがつきものといえるかもしれません。ほほえましく終わるケンカであればよいのですが、ケガを負わされてしまえば、保護者としても目をつぶっているわけにはいかないでしょう。法律に照らせばれっきとした傷害事件になりえるので、しかるべき対応を取ることを検討する方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、子ども同士のケンカでケガを負わされた場合の損害賠償請求について、久留米オフィスの弁護士が解説します。
1、子どものケンカでも損害賠償請求できる場合がある
「子どものケンカ」といえば、お互いに悪いところがあったことを認め合い、双方が謝罪をすれば済まされるものだという認識をもっている方も少なくありません。たしかに、ささいなことで口論・ケンカに発展してもみ合いになったようなケースでは、どちらにも否があるとたしなめるのが親の務めだといえるでしょう。
しかし、自分の子どもがケガをさせられたとなれば、謝罪だけで済む問題ではありません。加害者の少年には、損害賠償の責任が発生します。子ども同士のケンカやトラブルのなかで自分の子どもがケガを負わされてしまった場合には、加害者に対して損害賠償を求めることができる場合があるのです。
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(1)損害賠償とは?
「損害賠償」という用語は、ニュースなどでもよく耳にするでしょう。
民法第709条は「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。うっかりとでもわざとでも、相手に損害を与えてしまえば賠償の責任が発生するわけです。
損害賠償は、責任が生じた理由によって大きくふたつに分けられます。- 債務不履行に基づく損害賠償
- 不法行為に基づく損害賠償
債務不履行とは、契約などによって生じた支払いや返済の責任を履行しない場合を指します。もうひとつの不法行為とは、犯罪にあたる行為などによって相手に損害を与えることです。
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(2)子ども同士のケンカは不法行為になるのか?
法律に照らしたときに、相手に暴力をふるってケガをさせる行為が「不法行為」と呼べるものであることに疑いはないでしょう。刑法に規定されている傷害罪にあたるのですから、これは明らかな不法行為です。
しかし、子ども同士の場合でも同じように不法行為とみなされるのかという問題には疑問を感じる方も多いでしょう。実は、不法行為の成立に年齢の要件はありません。つまり、たとえ子どもが犯した行為であっても、不法行為が成立します。
ただし、未成年の子どもが犯した不法行為は、年齢によって「不法行為であると認識できるのか」が判断され、誰が賠償責任を負うのかに差が生じます。
2、どこまで損害賠償が請求できるのか?
子ども同士のケンカで損害賠償を請求できるのはどの程度の範囲になるのでしょうか?
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(1)慰謝料
慰謝料とは、不法行為によって負わされた精神的苦痛を賠償する金銭のことをいいます。
子ども同士のケンカであれば、加害者に対して恐怖を感じ登校もままならなくなる、おそろしい体験をたびたび思い出してしまい外出もできなくなるというケースもあるでしょう。
このような精神的苦痛を金銭に換算して慰謝料の請求が可能です。 -
(2)入院・通院などにかかる治療費
骨折などの重傷を負えば、入院・通院による治療も必要になるでしょう。
加害者の不法行為によってケガを負ったのであれば、治療費も含めた損害賠償の請求が可能です。 -
(3)そのほかの損害
ケンカの際に所持品を壊された場合は、物品の弁済も損害賠償に含めることができます。
3、損害賠償請求の相手は子ども・親のどちらか?
不法行為における損害賠償の責任を負うのは、もちろん不法行為をはたらいた本人です。
ところが、未成年の少年が犯した不法行為については「誰が責任を負うのか」に問題が生じます。特に、小学生から中学生程度の年代では責任能力の有無が問われるケースが多く、子どもの年齢やトラブルの状況によって差が生じることになるでしょう。
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(1)子ども本人が責任を負うケース
自らの行為によってどのような結果が生じ、どのような責任を負うことになるのかを理解できる能力を「責任能力」といいます。
ものごとの善悪については7歳程度を基準に能力が備わると考えられていますが「責任能力がある」と認められる年齢は12歳程度が基準です。中学生の場合は、おおむね責任能力が備わっていると判断され、裁判を起こされれば子どもが被告人となります。
なお、子ども同士のケンカであれば「誰が原告として訴えるのか」という点にも疑問が生じるでしょう。責任能力があれば被害を受けた子どもが原告となることも可能だと感じるかもしれませんが、民事訴訟法第31条は未成年者による訴訟行為を認めていません。
したがって、この場合、被害者の親が法定代理人として訴訟の原告を務めることになります。 -
(2)相手の親が責任を負うケース
子どもに賠償責任を負う能力がないと判断された場合や、親に監督責任があると認められる場合は、加害者の親が賠償責任を負うことになるでしょう。
加害者が中学生の年代であれば、加害者の親が賠償責任を負うケースは限定的です。本人が善悪や行為の結果について十分に理解できる年齢にたっしているので、基本的に本人が賠償責任を負うものと考えるべきでしょう。
ただし、子どもは自分で仕事をしてお金を稼ぐことができません。資力を持たない子どもが被告人となり損害賠償の命令が下されたとしても、実質的にはその親が支払いを肩代わりすることになるケースが一般的です。
4、損害賠償請求の流れと解決へのプロセス
子ども同士のケンカで加害者に損害賠償を請求する場合の流れや、トラブルを解決するためのプロセスをみていきましょう。
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(1)損害賠償請求の流れ
損害賠償を請求する際には、大きくふたつの方法を選ぶことになります。
- 自分で請求する
- 裁判所の制度を利用して請求する
自分で請求する場合は、加害者本人・加害者の親を交えた話し合いのテーブルを設けることになるでしょう。裁判所の手続きを経ることなく当事者間で法的なトラブルを解決することを「示談」といいます。
裁判所の制度を使って請求する場合は、調停・訴訟のいずれかを選択することになるでしょう。調停とは裁判所の調停委員を交えて被害者側・加害者側の双方が話し合い、トラブルを解決する手続きです。あくまでも「話し合い」としての制度ですが、調停によって決まった約束は裁判の判決と同じ効力があります。
訴訟とは、一般的にイメージする裁判の手続きです。原告・被告のお互いが証拠に基づいて意見を主張し、裁判官が審理して判決を下します。自分で請求する、裁判所の制度を利用する、いずれの場合も被害者本人やその親が個人で進めていくのは困難です。弁護士に相談して、代理人として交渉や手続きを一任することをおすすめします。
被害者の代理人として法的な手続きを進めることができるのは弁護士だけに限られます。弁護士以外の者が、「自分が交渉してあげる」と対応しようとしてくれることがあるかもしれません。しかし、弁護士以外の者が、被害者の代理人として交渉をしたり法的な手続きを取ったりすることは、法で禁じられているため、依頼すべきではありません。
民事訴訟に対応した経験が豊富な弁護士であれば、難しい交渉や手続きを任せれば、スムーズに損害賠償を請求できる可能性を高めることができます。 -
(2)解決へのプロセス
子ども同士のケンカといえども、そう簡単に許せるようなものではない犯罪に該当する内容であれば、まずは警察に被害届を提出するのが賢明です。管轄の警察署に出向いて事情を説明し、被害届を提出してください。
ただし、傷害事件として被害届が受理されても、トラブルのすべてが解消できるわけではありません。警察は慰謝料・治療費を含めた損害賠償請求のサポートをしてくれないので、加害者に相応の責任を問うのであれば弁護士に相談して示談・訴訟などの手続きを一任するべきと考えられます。
また、加害者が学校の同級生である、トラブルそのものが学校で起こったものであれば、学校側の責任を含めた話し合いも大切です。事件としては解決しても、その後の学校生活が窮屈なものになってしまわないためには、学校側に慎重な対応を求める必要があるでしょう。
5、まとめ
子ども同士のケンカといえども、自分の子どもがケガをさせられた場合は損害賠償請求を検討することがありえます。
ケガをしてしまった子どもの治療費を負担してもらうのはもちろんですが、損害賠償を請求することが今後のケンカ・暴力への抑止力となる可能性があります。未成年の少年は刑事責任を負いませんが、同じようなトラブルを防ぐためには、家庭裁判所の処分によって加害者の更生を期待するのも大切です。
子ども同士のケンカで加害者に損害賠償を請求したいと考えているのであれば、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスにお任せください。少年の不法行為に対する損害賠償請求を担う弁護士が、トラブル解決に向けて徹底的にサポートします。お気軽にご相談ください。
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