飲食店のテイクアウト販売に関する法律を解説|食品衛生法・食品表示法
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法務省の「民事・訟務・人権統計年報に基づくデータによると、2019年中の福岡県の会社の創業率は5.11%(全国平均4.40%)、廃業率は3.22%(全国平均3.69%)でした。
新型コロナウイルス感染症の影響に対応するため、テイクアウト販売を開始する飲食店が増えています。これからテイクアウト販売を開始しようとする場合、食品衛生法や食品表示法の規制内容に注意する必要があります。テイクアウト販売が違法営業にならないように、法律による規制について正しく理解しておくことが重要になるのです。
本コラムでは、飲食店のテイクアウト販売に関する食品衛生法と食品表示法のルールについて、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスの弁護士が解説いたします。
1、テイクアウトに関する食品衛生法上の許認可規制
飲食店を開店する際には、食品衛生法上の許可が必要とされています(食品衛生法第55条第1項、第54条、同法施行令第35条第1号)。
すでに上記の飲食店営業の許可を受けている飲食店は、飲食店営業の許可の範囲内でテイクアウト販売を行える可能性があります。
しかし、テイクアウト販売の内容によっては、追加で食品衛生法上の許可が必要となるのです。
追加での許可が不要な場合と必要な場合の違いについては、以下の項目で解説いたします。保健所や弁護士に相談しつつ、ご自身のケースに当てはめて検討してみてください。
2、飲食店営業の許可の範囲内で行えるテイクアウト販売の例
以下に挙げるテイクアウト販売は、飲食店営業の許可の範囲内で行うことができます。したがって、追加での許可申請は不要となるのです。
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(1)総菜・弁当のテイクアウト
客がそのまま食べることを前提として、飲食店で作られた総菜・弁当をテイクアウト販売することは、飲食店営業の許可の範囲内で行えます。
ただし、テイクアウト対象の食品の衛生管理には十分気を付けなければなりません。
そのため、保存・保管を適切に行うほか、購入者に消費期限を明確に伝えるなどの工夫が必要となります。 -
(2)出前
飲食店で作った料理を、客のところまで持っていく「出前(デリバリー)」についても、原則として飲食店営業の許可の範囲内で行うことができます。
ただし、すぐに食べられる量を超えて、作り置き分として出前を行う場合は、別途食品衛生法上の許可が必要となる可能性があります。
また、出前を行う際には、温度管理の徹底や配達時間の短縮などによって、衛生面に配慮しなければいけません。
3、追加での許可が必要なテイクアウト販売の例
以下のようなテイクアウト販売については、飲食店営業許可とは別に、対応する食品衛生法上の許可を取得する必要があります。
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(1)菓子・アイスクリーム・生めん・乳製品等の製造・販売
以下の製品を飲食店で製造して、客に持ち帰らせる場合には、分量にかかわらず、追加で製造業等の食品衛生法上の許可を得る必要があります(食品衛生法第55条第1項、第54条、同法施行令第35条各号)。
- 菓子
- あん類
- アイスクリーム類
- 乳製品
- 食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)
- 魚肉ねり製品(魚肉ハム、魚肉ソーセージ、鯨肉ベーコンなど)
- 清涼飲料水
- 乳酸菌飲料
- 氷雪
- 食用油脂
- マーガリン、シヨートニング
- みそ
- 醤油
- ソース類
- 酒類
- 豆腐
- 納豆
- めん類
- 総菜(通常副食品として供される煮物、焼物、揚物、蒸し物、酢の物、あえ物を除く)
- 缶詰、瓶詰食品
- 添加物
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(2)乳類・食肉・魚介類・食料品などの仕入れ販売
飲食店以外の場所で製造した以下の食品を仕入れて、客に対してテイクアウト販売する場合には、追加での食品衛生法上の許可が必要となります(食品衛生法第55条第1項、第54条、同法施行令第35条各号)。
- 乳類(牛乳、山羊乳、入院料、乳を主原料とするクリーム)
- 食肉
- 魚介類
- 氷雪
4、食品表示法の規制にも注意|総菜・弁当のテイクアウト販売に必要な食品表示
テイクアウト販売を行うために料理などを容器に詰める場合、原則として食品表示法に基づく食品表示を行う必要があります(食品表示法第5条)。
包装の形態や販売場所などによって必要な表示が異なるため、状況に応じて漏れのない表示を行うことが求められるのです。
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(1)中身の見えない容器・包装で販売する場合の表示
外から中身が見えない容器・包装によって総菜・弁当を販売する場合、以下の事項を表示する必要があります。
- 名称
- 原材料名
- 原料原産地名(重量割合が第1位の原材料についてのみ必要)
- 添加物
- アレルゲン(原材料の品目ごとに表示が必要)
- 内容量(外から見て中身の量、個数がわかる場合は省略可。たとえば弁当の場合、通常は明らかに「1個」なので省略可)
- 消費期限(年月日に加えて、時間まで表示することが望ましい)
- 保存方法(常温保存以外に特に注意事項がなければ省略可)
- 製造者名、製造者住所
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(2)中身の見える容器・包装で販売する場合の表示
透明な容器など、外から中身が見える容器・包装によって総菜・弁当を販売する場合、原材料がわかるおかずについては、以下のように簡略化した表示を行うことが認められています。
- おかず類をまとめて「おかず」と表示
- メインとなるおかずを表示し、それ以外を「その他おかず」「その他付け合わせ」などと表示
<省略表示が認められるおかずの例>
鶏の照り焼き、焼鮭、目玉焼き、筑前(ちくぜん)煮、ポテトサラダ
<省略表示が認められないおかずの例>
エビフライ、天ぷらなどの衣で包まれたおかず
ただし、アレルゲンを含む旨の表示と、添加物表示については一切省略できません。もし「おかず」「その他おかず」などと省略されたおかずにアレルゲンや添加物が含まれている場合には、抜き出して表示する必要があるのです。
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(3)製造した店内のみで販売する場合の表示
飲食店の店内で製造した総菜・弁当を、その店内のみで販売する場合には、原材料と原料原産地の表示を省略することができます(食品表示基準第5条第1項)。
これは、製造または加工をした者が、消費者に直接品質等についての説明ができるためです。
したがって、客から原材料や原料原産地について質問を受けた場合には、その場で回答できるようにしておく必要があります。 -
(4)客の注文に応じてその場で詰めて販売する場合の表示
注文を受けてから調理を開始して、その場で料理を詰めて総菜・弁当として販売する場合には、食品表示法に基づく食品表示は必要とされません。
この場合にも、消費者は調理担当者に対して、総菜・弁当の品質等について直接質問することができるために、食品表示は不要とされているのです。
上記の趣旨から、責任者や調理担当者は、客から総菜・弁当の品質などに関する質問をされた場合には、すぐに回答できるようにしておく必要があります。
経営者自身が店舗を不在にする時間が長い場合には、従業員の教育を徹底しておくことが求められるでしょう。
5、テイクアウト販売に関する規制に不安があったら弁護士に相談を
店舗での飲食を提供する飲食店営業と、総菜・弁当などのテイクアウト販売とでは、食品衛生法や食品表示法との関係で、異なる法律が適用される場合があります。
そのため、これまで飲食店営業を行ってきた事業主の方でも、新しく理解・遵守しなければならないルールが出てくる可能性があるのです。
食品衛生法や食品表示法のルールについて正しく理解できていなかったために無許可営業や食品表示義務違反などに該当すると、罰則や行政処分などの対象になってしまうおそれがあります。
そうなれば、テイクアウト販売だけでなく、本業である飲食店の営業にも支障が生じる可能性が高いのです。
もし食品衛生法や食品表示法のルールに不安がある場合には、まずは弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、ご想定のテイクアウト販売の形態などに照らして、食品衛生法上の許可の要否・必要となる食品表示の内容について、明快なアドバイスをいたします。
久留米市や周辺地域でこれからテイクアウト販売を始めようとする飲食店事業主の方は、万全の状態でテイクアウト販売を開始するため、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスにまでご相談ください。
6、まとめ
飲食店が新たにテイクアウト販売を開始する場合には、取得済みの飲食店営業に関する許可に加えて、追加で食品衛生法上の許可申請も必要とされる可能性があります。
また、容器に詰めて総菜や弁当の形でテイクアウト販売を行う場合には、食品表示基準に従った食品表示を行うことが必要となるのです。
上記のテイクアウト販売に特有のルールをきちんと遵守し、安定したビジネスを展開するために、弁護士に相談することをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所では、食品関係の規制に習熟した弁護士が、ご想定のサービス内容に沿って、的確にアドバイスをご提供いたします。
これからテイクアウト販売を始める、またはすでにテイクアウト販売を開始している飲食店営業者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスにまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています