即日解雇されたらどうすればいい? 対応方法を弁護士が解説
- 不当解雇・退職勧奨
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会社から即日解雇されてしまい、途方に暮れている従業員の方はいらっしゃいませんか。2022年度に福岡県内の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争に係る相談は1万956件で、そのうち解雇に関するものは1081件でした。
使用者による一方的な即日解雇は、違法の可能性が高いといえます。まずは弁護士に相談して、不当解雇を無効にできる可能性がないか、冷静に判断することが重要です。
本記事では、会社に即日解雇されたらどうすべきか、相談先や対処法などをベリーベスト法律事務所 久留米オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(福岡労働局)
1、会社に即日解雇されたら、どうすべき?
会社から即日解雇を告げる解雇通知書を受け取っても、復職を求める余地は残されています。落ち着いて以下の対応を行いましょう。
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(1)相談窓口を探す|弁護士・労働基準監督署
不当解雇を覆すためには、専門的な知見に基づく対応が必要不可欠です。ご自身だけで対応するのは大変なので、まずは信頼できる窓口へ相談しましょう。
不当解雇に関する相談先としては、主に弁護士と労働基準監督署の2つが挙げられます。詳しくは後述しますが、それぞれ対応できる事柄が異なるので、状況に合わせて使い分けることが大切です。 -
(2)解雇理由証明書の発行を請求する
不当解雇の無効を主張するに当たっては、会社が主張する解雇理由が不合理であることを論証する必要があります。そのためには、まず会社が主張する解雇理由を把握しなければなりません。
解雇された労働者は、会社に対して解雇理由証明書の発行を請求できます(労働基準法第22条第1項)。
即日解雇されたら、速やかに解雇理由証明書の発行を請求しましょう。 -
(3)解雇の理由が正当なものであるかどうかを検討する
解雇理由証明書に記載された解雇理由は、会社の公式見解になりますので、その内容に対する反論を検討することになります。
後述するように、解雇の種類に応じた要件を満たしていなければ、解雇は無効となります。弁護士のアドバイスを受けながら、具体的な事実関係や判例実務などに照らして、会社が主張する解雇理由の不合理性を明らかにできるような反論を検討しましょう。 -
(4)不当解雇を主張して争う
不当解雇に対する反論の準備が整ったら、実際に不当解雇の無効を主張して争いましょう。
不当解雇の無効主張は、会社との交渉・労働審判・訴訟などの手続きを通じて行います(後述)。弁護士を代理人に選任すれば、これらの手続きにもスムーズかつ適切に対応してもらえるので安心です。
2、即日解雇は違法なのか?
即日解雇は、解雇の種類に応じた要件を満たしていない場合や、解雇予告手当が支払われていない場合には違法となります。
もっとも、解雇予告期間を置かず、解雇予告手当の支払もなく行われた解雇は、使用者が即日(即時)解雇に固執する趣旨でない限り、解雇予告通知後30日を経過するか、解雇通知後に解雇予告手当の支払があれば、そのいずれか先の時点で解雇の効力が生じます(解雇が有効であるか無効であるかの問題は残ります。)
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(1)解雇の種類と要件|懲戒解雇・整理解雇・普通解雇
解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があり、それぞれ満たすべき要件が異なります。
① 懲戒解雇
企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇です。
就業規則上の懲戒事由に該当すること、および懲戒解雇に関する規定が就業規則に定められていることが必要になります。
② 整理解雇
経営危機に陥った会社が、人件費の削減を目的として行う解雇です。
整理解雇の4要件(解雇の必要性・解雇回避努力義務の履行・被解雇者選定の妥当性・手続きの妥当性)を総合的に考慮して有効性が判断されます。
③ 普通解雇
懲戒解雇と整理解雇を除く解雇です。
労働契約または就業規則に定められた解雇事由に該当することが必要になります。
さらに、すべての種類の解雇に共通して「解雇権濫用の法理」が適用されます。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法第16条)。
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(2)違法な解雇理由の例
たとえば、以下のような理由で行われる解雇は無効と判断される可能性が高いです。
(例)- 上司の指示に対して意見を言った労働者を、態度が反抗的であるというだけの理由で懲戒解雇した。
→懲戒事由に該当しないため、解雇は無効となりえます。 - 1回無断欠勤したことだけを理由に懲戒解雇した。
→懲戒事由には該当するものの、労働者の行為の内容・性質に比べて懲戒解雇は重すぎるため無効となりえます。 - 前年よりも業績が悪化したので、人件費を削減する目的で整理解雇した。整理解雇に先立ち、経営陣は役員に関する費用の削減、従業員の賞与削減など解雇回避策を実施していなかった。
→解雇を回避する努力を尽くしていないので、整理解雇は無効となりえます。
- 上司の指示に対して意見を言った労働者を、態度が反抗的であるというだけの理由で懲戒解雇した。
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(3)解雇予告手当が支払われていない場合、即日解雇は原則違法
会社が労働者を即日解雇する場合は、原則として30日以上前に解雇を予告するか、または30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労働基準法第20条第1項)。
労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受ければ、解雇予告または解雇予告手当の支払いに関する義務が免除されますが、認められるのはごく限られた例外的なケースのみです。
したがって、解雇予告手当が支払われていない場合、解雇予告期間を設けない即日解雇は原則として違法となります。
3、不当解雇の可能性がある場合、相談すべきは弁護士? 労働基準監督署?
会社による解雇が不当解雇に当たると思われる場合、弁護士または労働基準監督署に相談しましょう。
弁護士と労働基準監督署では、対応できる事柄に違いがあります。特に、会社に対して不当解雇の無効を主張したい場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
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(1)弁護士|代理人として心強い味方になる
弁護士は法律の専門家であり、労働紛争の解決を取り扱っています。
弁護士に依頼すると、不当解雇の無効主張や、それに関連する未払い賃金の請求などにつき、代理人として活動してもらうことができます。
ご自身で対応する手間が大幅に省ける上に、法的な根拠に基づいて適切な主張・請求を行うことができる点が、弁護士に依頼することの大きなメリットです。 -
(2)労働基準監督署|一般的なアドバイスを受けられる
労働基準監督署は、労働法令の遵守状況などについて各事業場を監督する行政官庁です。
労働基準監督署には「総合労働相談コーナー」が設置されており、不当解雇への対応について一般的なアドバイスを受けることができます。
ただし弁護士とは異なり、労働基準監督署は労働者の代理人として活動してくれるわけではありません。会社に対する不当解雇の無効主張などは、労働者が自ら行う必要がある点に注意が必要です。
4、不当解雇トラブルを解決するまでの流れ
不当解雇に関するトラブルは、以下の手続きによって解決するのが一般的です。
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(1)会社との交渉
まずは、会社との交渉を通じて解決を試みるのが一般的です。交渉がまとまれば、早期に柔軟な形での解決を得ることができます。
会社との交渉においては、不当解雇の撤回および復職を求めることが基本線となりますが、退職金・解決金などの条件次第では、合意退職を受け容れることも選択肢のひとつです。 -
(2)労働審判
労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、調停または労働審判によって紛争解決を図ります。
労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、迅速な解決を期待できる点が大きなメリットです。ただし、労使いずれかから異議が申し立てられると、自動的に訴訟へ移行する点にご注意ください。
参考:「労働審判手続」(裁判所) -
(3)訴訟
訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決の手続きです。労使双方が証拠に基づいて主張・立証を行い、裁判所が判決によって結論を示します。
判決が確定すれば、不当解雇に関するトラブルの最終的な解決結果が決まります。
訴訟において有利な判決を得るためには、解雇が不当であることを証拠に基づいて説得的に示すことが重要です。弁護士のサポートを受けながら、十分な準備を整えた上で訴訟に臨みましょう。
5、まとめ
会社から即日解雇を通知されたとしても、それが不当解雇である可能性は大いにあります。動揺する気持ちを抑えて一度冷静になり、弁護士に対応のアドバイスを求めることをおすすめします。
弁護士を代理人として不当解雇の無効を主張すれば、解雇の撤回・復職や多額の解決金の支払いなど、労働者側にとって有利な解決を得られる可能性が高まります。会社に即日解雇されたら、労働事件について豊富な経験を有する、信頼できる弁護士に依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、不当解雇や関連する請求に関して、労働者の方のご相談を随時受け付けております。会社から突然即日解雇を通知され、どのように対処すべきか分からずお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスにご相談ください。
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