呼気検査は任意? 拒否したら逮捕されるのかを弁護士が解説!
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福岡県警が発表した統計データによると、福岡県で平成30年中に起きた飲酒運転による事故件数は144件で、そのうち久留米市で発生した事故件数は6件でした。
飲酒運転の代表的な検問といえば、呼気検査です。県内で呼気検査が行われ、酒気帯びと判断された飲酒運転事故の件数は100件にも上っています。しかし、運転手としては、いきなり呼び止められて呼気検査をさせられるのは、たとえお酒を飲んでいなくても不快に感じる人もいるかもしれません。
では、もしも呼気検査を拒否していたら、果たしてどうなるのでしょうか? ベリーベスト法律事務所・久留米オフィスの弁護士が解説します。
1、呼気検査とは?
呼気検査は飲酒検問の中で行われる検査のひとつです。飲酒検問は通常、交通違反の予防検挙を目的として、不特定の車両に対して交通検問の一環として行われています。そして、飲酒検問の場合は、車両を停止させられるまでの段階と、呼気検査などの飲酒検知のための検査を求められる段階とがあります。
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(1)拒否しない方がいい交通検問
車両を停止させられるまでの段階は、車の外観からは交通違反の疑いなどがわからない不特定車両に対する検問です。交通の取り締まりを警察の責務として定める警察法2条1項に照らし、任意の協力を求める形で行われます。
自由を不当に制約することにならない方法・態様であることを条件内であれば適法です。この段階では、職務質問を無視することと似たように感じられることでしょう。しかし、警察の停止を無視して走行を続けるなどしては、別の罪に問われかねません。停止を促されたら、抵抗せずに従うように注意してください。 -
(2)呼気検査で発覚する酒気帯び運転
さて、酒気帯び運転は、多くの場合、この交通検問や職務質問で検査されて発覚します。その際に警察が酒酔いかどうかの判断をするために行うのが、呼気検査です。
警察が運転者の息を吐かせて匂いを調べたり、風船を膨らませてアルコール濃度を測ったりして検査します。呼気検査をすることでアルコールの血中濃度が高いことがわかると、道路交通法違反に問われます。
酒気帯び運転の判断基準は、運転者の体内にどの程度のアルコールがあるかで判断されるでしょう。基準値は、呼気1リットルに0.15ミリグラム以上、または血中1ミリリットルに0.3ミリグラム以上です。この基準には、お酒の種類はもちろん、あなた自身がお酒に強いかどうかも関係ありません。日本酒やウイスキーはもちろん、ビール1本でも、呼気検査の結果、該当の数値に達していれば「酒気帯び運転」に該当することになります。 -
(3)酒気帯び運転と酒酔い運転の違い
「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態とされています。これは、一般的に酒気帯び運転よりも酔っぱらっている状態を指します。酒酔い運転に関しては、自動車やバイクなどだけでなく、自転車も取り締まりの対象となりますので、注意してください。
ただし、人によってはお酒に強い人と弱い人がいます。お酒に弱い人だと、酒気帯び運転に該当する数値が出なくても酔っぱらっていて、「酒酔い運転」に該当するケースがあるでしょう。また逆に、お酒に強い人だと、酒酔い運転にみなされない状態でも、酒気帯び運転に該当する数値が検出されるケースがあります。
2、呼気検査拒否で罪に問われる?
急いでいるときや、一切飲んでいないときは、呼気検査を拒否してもいいような気がしている方もいるでしょう。では、呼気検査を拒否したらどうなるのでしょうか?
結論からいうと、呼気検査を拒否すると罪に問われる可能性があります。通常の職務質問であれば、任意となり応じる必要は基本的にありません。そのせいか、呼気検査が行われることの多い飲酒検問も「任意」と勘違いされて、呼気検査においても拒否できるという誤解がインターネット上などで流布されている可能性があります。
しかし、道路交通法第67条第3項では「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている者が第65条第1項の規定に違反して車両等を運転するおそれがあると認められるときは、警察官は、次項の規定による措置に関し、その者が身体に保有しているアルコールの程度について調査するため、政令で定めるところにより、その者の呼気の検査をすることができる」と定められています。第65条は、酒気帯び運転などの禁止を定めている条文です。
さらに、罰則などを定めた道路交通法第118条の2には、「第67条(危険防止の措置)第3項の規定による警察官の検査を拒み、又は妨げた者」も規定されています。つまり、酒気帯び運転違反の取り締まりのために行われる呼気検査を拒否したり、妨害したりした者は、罰則を処される可能性があるということになります。
かつて、呼気検査を拒否した者を罰することを規定した道路交通法第118条の2は、日本国憲法第38条1項の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」に反するのではないかという議論があり、裁判で争われました。しかし、最高裁が平成9年1月30日判決で、「呼気検査を拒否した者を処罰することは憲法違反ではない」という判断を下しています。
つまり、呼吸検査を拒否すれば、罪に問われると思っていた方がいいでしょう。
3、呼気検査拒否や飲酒運転の量刑について
では、呼気検査を拒否することが罪に問われるのなら、その量刑はどれくらいでしょう? そのことについて以下に解説していきます。
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(1)呼気検査拒否罪とは
呼吸検査は道路交通法第67条第3項によって、警察に付与されているものです。同第118条の2に規定されているとおり、呼気検査を拒否した場合は呼気検査拒否罪として「3か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処せられることになります。
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(2)飲酒運転をした場合の量刑について
呼気検査をして、飲酒運転を行ったと確定した場合は、アルコール量の程度により、酒気帯び運転、酒酔い運転または危険運転致死傷罪のいずれかに該当するとして罪が問われることになります。
酒気帯び運転の場合、罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。酒酔い運転の場合、罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金が処されます。いずれの場合も、刑罰が科されるとともにあわせて免許証の得点制度による行政処分も行われ、たとえ前科がなくても免許取り消し処分にもなる可能性があります。
もし、飲酒運転によって物損事故を起こしてしまっていたら、上記の範囲で罪を問われるとともに、壊してしまった物を弁償する必要があるでしょう。
また飲酒運転による人身事故の場合は、「危険運転致死傷罪」に問われる可能性があります。被害者のケガの程度によっては、初犯であっても起訴に至り、実刑を科せられる可能性が高いでしょう。有罪判決が下れば、1年以上15年以下の懲役刑が科されることになります。
一般的に交通事故で逮捕に至るケースのほとんどが被害者のいる犯罪であるとみなされます。したがって、起訴を回避したいと考えるのであれば、被害者との示談成立が重要なカギとなるでしょう。深く反省し、被害者に対する謝罪と弁償を真摯に行ったことが認められれば、情状が酌量され、量刑も左右される可能性があります。
4、呼気検査拒否した場合の逮捕の流れ
呼気検査拒否で逮捕されたというケースのほとんどが現行犯逮捕に該当すると考えられます。もしかしたら、現場で呼気検査を拒否しようとして、警察官から「なら逮捕します」といわれたという方もいるかもしれません。
中でも呼気検査を拒否したあと飲酒運転が発覚したケースともなれば、すでに大変心証が悪い状態にあると考えられます。そのまま捜査や裁判に進めば、重い刑罰が科される可能性が高いでしょう。
では、実際に、呼気検査を拒否すると、どのように逮捕され、裁判に至るかを解説していきます。
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(1)逮捕から裁判まで
呼気検査拒否した上、実際に検査してアルコールの反応が出たら、まず逮捕されるでしょう。呼気検査拒否の際、非常に強い抵抗をしたり、その他業務まで妨害したりすれば、たとえアルコールの反応がなくても逮捕されてしまうこともあり得ます。
逮捕されてしまうと、まずは警察の取り調べを受けます。警察は逮捕から48時間以内にその身柄と事件を検察へ送致しなければなりません。そして送致を受けた検察官は、24時間以内に「勾留(こうりゅう)」の必要性を判断します。
勾留とは、引き続き身柄を拘束したまま取り調べを行うことで、勾留が決定すれば最長20日間も、留置場や拘置所で寝泊まりする必要があります。主に逃亡や証拠隠滅などの可能性がある際に行われるもので、裁判所の許可が必要な手続きで、裁判所で勾留要否が判断されます。
勾留の必要がないと判断されれば、原則、帰宅できますが、「在宅捜査扱い」という形で捜査自体は続きます。呼び出しに応じて取り調べに協力する必要があるでしょう。
最終的には検察が、起訴か不起訴かを決定します。不起訴になれば刑罰を受けずに釈放されますが、起訴されると裁判になり、刑罰を受ける可能性が高いでしょう。 -
(2)裁判になったあとは?
逮捕された時点では、あくまでも「被疑者」であり、罪を犯した疑いがある者という立場です。さらに起訴されれば、「被告人」と呼び名が変わります。
起訴には「公判請求」と「略式請求」の2種類があり、同じ裁判でも手続き方法が異なります。略式請求は、被疑者本人が罪を認めていて償う意思があり、書類手続きだけで量刑を決定できる罰金刑が処されることが確定しているときに行われるものです。事実を争うことはないため、略式請求となったときは100%有罪となり、前科がつきます。
他方、公判請求では、公開された刑事裁判で罪を裁かれることになります。刑事裁判は、原告側となる検察と被告人が事実関係を公表しつつ争い、判決が下される場です。状況によって罰金刑や懲役刑に処されることになるでしょう。もしも、飲酒運転だけではなく、その検査の前に被害者の出る交通事故を起こしていたら、より重い罪が処される可能性があるといえるでしょう。 -
(3)逮捕されたあと、弁護士ができること
いずれにしても、起訴されれば99%は有罪となります。たとえ罰金刑であっても前科がついてしまうということです。また、起訴が決まるまでのあいだだけでも最長23日間も身柄の拘束を受ける可能性があることから、もし有罪にならなくても将来にわたる不利益を受けてしまうこともあるでしょう。
そこで、呼気検査拒否や飲酒運転などで逮捕されてしまった方の依頼を受けた弁護士は、まず早期の身柄釈放を目指します。次に、起訴や実刑の回避を目指すことになるでしょう。
もし被害者がいる場合、弁護士は、あなたの代理人として被害者との示談交渉を行います。十分な謝罪と賠償によって示談が成立させることができれば、早期に釈放される可能性が高まるでしょう。また、万が一裁判になってしまったときも、情状が大きく酌量され、判決に影響を与えます。
示談の話し合いは当人同士で行うとこじれてしまうケースが少なくありません。弁護士に依頼することによって早期解決を目指すことが可能となります。
また、事故を起こしていなければ、裁判になっても罰金や執行猶予になる場合があります。その際は前科があるか、反省しているか、どの程度の飲酒かといった点が考慮されるでしょう。その際も考慮してもらえるよう、弁護士が積極的な弁護活動を行うことができます。
お問い合わせください。
5、まとめ
特に先を急いでいるときは、いちいち車を止められての呼気検査に腹が立つと感じる方もいるかもしれません。しかし、飲酒していてもいなくても、呼気検査を拒否すれば、罪に問われることがあります。
もし飲酒運転をしてしまっていたときであればなおさら、呼気検査を拒否したところで見逃してもらえるというわけでもありません。まして振り切って逃げてしまっては、パトカーに追跡されることもあるでしょう。それよりも検査を拒否せずに、素直に呼気検査を受けて、警察の判断に従う方が無難難です。重い処罰を科されずに済む可能性が高まるでしょう。
もしも、あなたの身内が呼気検査拒否によって逮捕されてしまったなど、問題が起きたときは、できるだけ早急にベリーベスト法律事務所 久留米オフィスで相談してください。刑事事件や交通事件に対応した経験が豊富な弁護士が、適切な弁護活動を行います。
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