結婚後に夫の嘘が発覚! 離婚すべきか? 考えられる四つの選択肢

2024年08月19日
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結婚後に夫の嘘が発覚! 離婚すべきか? 考えられる四つの選択肢

令和3年、久留米市では1253件の婚姻届が提出されました。

市役所や町役場に婚姻届を提出して受理されれば、法的に夫婦になることができます。しかし、結婚生活が始まったところで相手が仕事や年収について嘘をついていたことが発覚する場合もあります。そんな場合には二人の関係を再構築しようと努力する人もいるでしょうが、「本当のことを知っていたら結婚しなかった」と、離婚を考える方も多いでしょう。

本コラムでは、結婚後に相手の嘘が発覚したことを理由に離婚をすることはできるのかどうか、とるべき対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 久留米オフィスの弁護士が解説します。

1、結婚後に相手の嘘が発覚したら…|四つの選択肢

「交際期間中に話していた年収の金額が、実際には半分しかないことが結婚後に発覚した」、「借金を抱えていることを隠されていた」など、相手が嘘をついていたことが結婚後に発覚する場合があります。
以下では、結婚後に相手の嘘が発覚した場合その場合にとることのできる対応の選択肢を解説します。

  1. (1)話し合いによる再構築

    相手の嘘が発覚した後として、夫婦で話し合いを行うことでわだかまりを解消し、関係を再構築できる可能性があります。

    ただし「結婚前から嘘をつかれていた」という事実は、関係を再構築できたとしても簡単に忘れられるものではないでしょう。
    再構築を選ぶ場合は「不信感を拭うためにどう自分の気持ちに折り合いをつけていくか」「再び相手が嘘をつかないようにするにはどうすればいいのか」など、その後の夫婦生活を具体的に想像しながら配偶者との話し合いを進めていくことが重要になります。

  2. (2)婚姻の取り消し

    婚姻は、以下の三つの条件を満たすことで成立します。

    1. ① 婚姻をする意思が合致していること
    2. ② 婚姻の妨げになる事由(婚姻障害)が存在しないこと
      ・ 婚姻適齢に達している
      ・ 重婚ではない
      ・ 近親婚ではない
    3. ③ 婚姻届を提出していること


    条件を満たして婚姻が成立すると、婚姻を撤回することは基本的にはできません。
    しかし、相手に騙されて婚姻した場合は「婚姻の取り消し」を家庭裁判所に申し立てることができます。
    家庭裁判所に認められたら、市役所や役場で婚姻を取り消すことが可能です。

    しかし、「結婚するためにすこし事実を誇張する」程度の行為は多くの人が行っているため、相手の嘘が軽度である場合には家庭裁判所で婚姻取り消しが認められる可能性は低いといえます。
    婚姻の取り消しが認めらやすい場合と認められづらい場合の違いについては、第2章で詳しく解説します。

  3. (3)慰謝料請求

    不倫やモラハラなどの不法行為を相手が行った場合には、精神的苦痛に対する損害賠償として「慰謝料」を請求することができます。
    しかし、「配偶者に嘘をつかれたことで傷ついた」というだけでは、嘘をつくこと自体は不法行為ではないため、慰謝料を請求できる可能性はほとんどありません。

    ただし、「相手の嘘が原因で夫婦が離婚に至った」という場合には、それが離婚原因の重要なものと評価されれば、慰謝料を請求できる可能性があります

  4. (4)離婚

    相手の嘘が原因で婚姻を取り消す場合には、「騙されていたことがわかってから3ヶ月以内」に、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
    婚姻の取り消し可能な期間を過ぎてしまった場合や、婚姻の取り消しが認められない程度の嘘だった場合には、「婚姻の取り消し」ではなく「離婚」を検討しましょう。

    離婚をするための方法は、下記の通りです。

    ① 夫婦の話し合い
    離婚をするためには、まずは夫婦で話し合いを行うことになります。
    この話し合いで離婚の合意に至れば「協議離婚」が成立します。

    ② 調停の申し立て
    話し合いが決裂した場合には、家庭裁判所に「離婚調停」を申し込むことになります。
    離婚調停では、調停委員という第三者と共に、離婚の合意に向けた話し合いを進めていくことになります。
    なお、調停では、相手と顔を合わせたくない場合には対面を避けてもらうこともできます。

    ③ 裁判の提起
    調停でも離婚ができなかった場合には、家庭裁判所に「離婚訴訟」を提起することになります。
    ただし、「法定離婚事由」が存在しなければ、裁判所から離婚が認められません
    具体的には、民法770条に定められている五つの法定離婚事由のいずれかが必要となるのです。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の生死が3年以上不明
    • 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    「配偶者に嘘をつかれたこと」を離婚理由とする場合には、その事実が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが争点となるでしょう。
    たとえば、「夫の年収が結婚の決め手になったにもかかわらず、実際には夫が無職だった」といった場合には、その嘘をついた行為が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されて、離婚判決が下される可能性があります。

2、婚姻の取り消しが認められ得るケース・難しいケース

配偶者の交際中の嘘によって婚姻の取り消しが認められるのは、「嘘が悪質ありで、真実を知っていれば結婚はしなかった」というような場合に限ります。

では婚姻の取り消しが認められ得るケースと、取り消しが難しいケースについて、それぞれ紹介します。

  1. (1)婚姻の取り消しが認められ得るケース

    以下の場合には、婚姻の取り消しが認められる可能性があります

    • 「初婚である」と言っていたが離婚歴があった
    • 隠し子がいた
    • 同性愛者だった
    • 持病があることを隠していた
    • 無宗教のはずが新興宗教の熱心な信者だった
    • 前科や前歴があった
    • 借金があった


    このような嘘は結婚後の生活に極めて大きな影響を与えるため、「悪質な嘘」といえます。したがって、「悪質な嘘を元に結婚に至り、その嘘が結婚生活に多大な影響が与えられている」として、家庭裁判所から婚姻取り消しを認められる可能性があるのです。

  2. (2)婚姻の取り消しが難しいケース

    以下のような場合には、婚姻を取り消すことは難しいといえます

    • 聞いていた趣味と異なる趣味をもっていた
    • 年齢が違った
    • 仕事や会社が違った
    • 家族構成が違った


    このような嘘が結婚後の生活に与える影響は「極めて大きい」とまでは言い難いため、家庭裁判所から婚姻取り消しを認められる可能性は低いのです。

3、慰謝料請求をするときに押さえておくべきポイント

慰謝料を請求するための手続きは、離婚の場合と同じく、まず「夫婦の話し合い」を行い、それが決裂すれば「調停」、調停が不成立なら「裁判提起」という流れで進みます。

ただし、精神的苦痛は暴力とは異なり目に見えないものであるため、相手を納得させるためや裁判になったときに裁判官に理解してもらうために、証拠を収集することが重要となります。
具体的には、以下のような証拠を集めることが大切です。

  • 診断書
    嘘をつかれたことでひどく苦しみ、うつ病や胃痛などの病気を発症してしまったケースでは、医師から診断書をもらうことで精神的苦痛を受けたことを証明しやすくなります。

  • 通帳のコピーや家計簿
    借金が発覚し、家計が逼迫(ひっぱく)したことで苦痛を感じ離婚に至るような場合には、借金がどれだけ家計に影響を与えたのかを証明するために「通帳のコピー」や「家計簿」が重要となります。

  • その他事実を証明するもの
    たとえば配偶者に離婚歴があった場合や隠し子がいた場合には「戸籍謄本」、前科や前歴があることを証明する場合には「新聞やインターネットのニュース記事」、またどちらの場合でも「探偵事務所の調査結果報告書」など、事実の証明に役立つものは幅広く収集することが大切です。


4、弁護士が力になれること

配偶者が交際期間中に嘘をついていたことが発覚した場合、「話し合い」「婚姻取り消し」「慰謝料の請求」「離婚」いずれかを選択していくことになります。

しかし、そもそも「婚姻取り消し」や「慰謝料の請求」、「離婚」ができるケースなのかどうか自分ではわからない場合や、「話し合い」をするにもどうしたらいいかわからない場合もあるでしょう。

対応に困っている段階で早めに弁護士に相談をすることには、以下のようなメリットがあります。

  • 弁護士を入れることで冷静な話し合いができる
  • 慰謝料請求について証拠収集のアドバイスや手続きのサポートをしてもらえる
  • 離婚を適切な条件で成立できるようなアドバイスやサポートをしてもらえる
  • 調停や裁判を起こす場合も対応を任せられる


法的な知識の不足によって不利な立場に追い込まれないようにするためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします

5、まとめ

結婚した後になって相手の嘘が発覚した場合、その嘘の内容や程度によって、とるべき対応も異なります。
婚姻の取り消しが認められるかどうか、離婚できたり慰謝料を請求できたりするかどうかを判断するためには法律の専門知識が必要となるため、できるだけ早い段階から、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

結婚生活に関するお悩みをお持ちの方や、離婚を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています